ブランクのある看護師の復職、転職先選びのコツ
看護師としての資格は持っているけれども、しばらく現場に出ていなかった。それでも、また看護師として働きたい。そうした希望を持っていらっしゃる方も多いかと思います。
そうしたブランクがある場合の看護師の転職についてここでは考えていきたいと思います。
目次
看護師、ブランクの悩み
ブランクがあって再び復職するときの悩みは看護師に限りませんが、看護師の場合、その業務内容から人の命に関わることもあるので、それだけ重圧を感じることも多いのです。
ブランクの理由
人によって看護師を辞めてしまった理由はさまざまです。大きく分けると次の2つの場合が考えられます。
1.転職
看護師はその業務内容から非常にハードな職業であり、「自分に向かない」と思い転職するケースが多いです。看護師としての職場を変わるだけではなく、職業も全く看護師とは違うものに転職するという場合も多いのです。
そうした別の職に就いていた人が、ある時期に再び看護師としてやってみたいと思うことがあります。これが1つ目のブランクの理由です。
2.出産、子育て
看護師として働いていたものの、結婚後出産し、お子さんが大きくなるまで専業主婦でいたという人もいます。最近ではパートや短時間勤務などの制度もありますが、しっかりと子供が大きくなるまでは子育てに専念したいというのも1つの考え方です。
実際に子どもに手がかからなくなってから、再び現場復帰したいと考える人もいらっしゃいます。これが2つ目のブランクの理由です。
ブランクから復職するときの悩み
看護師経験がある程度あって、ブランクも数年であればそれほど問題がないのかもしれませんが、中には10年、20年というブランクを経て復職したいという人もいらっしゃいます。
その場合、ほとんどペーパードライバーと変わらない可能性もあり、不安に思うのも無理はありません。主な復職時の悩みについて考えます。
1.最新技術に追いつけない
5年、10年とブランが大きい人ほど感じる悩みです。以前と比べても医療技術は大きく進歩していますが、IT技術の発展と伴い、医療器具や医療機械の進歩も著しいものがあります。
人工呼吸器の扱い1つをとっても大きく変わっています。技術の発達で複雑になった部分、簡略化された部分双方ありますが、いきなり使ってくれといわれても戸惑いますし、覚えられないという不安もあるかと思います。
携帯電話が出たころの知識で止まっている人にいきなりスマホを使ってくれといわれても、戸惑いが出るであろうことと同じですね。習得できればあとは慣れるだけなのですが、そこまでの心理的なハードルが高いようです。
2.基本的な看護技術がない、忘れてしまった
これは別の仕事に転職した人に多い理由ですが、看護師になってすぐに「合わない」と思って職を変えてしまったために、採血や注射など基本的な看護師としての技術が身に付いていないという悩みです。
ゲームで例えると「看護師レベル1」のまま別の職業に転職し、再び看護師に戻ろうというイメージです。つまり、即戦力の看護師としては使い物にならないとういうことを本人が自覚しているケースです。
実際に看護師の転職求人はほとんど(第二新卒の場合を除いて)経験者を求めていて(臨床経験3年以上など)、即戦力として働けることを期待しています。看護師経験がほとんどない人もそうですし、ブランクが15年など長期にわたっていると、看護技術を忘れてしまっている場合もあります。
普通の仕事なら「やりながら思い出す」ということもできますが、医療の現場は人の命に関わるものですのでいい加減なことはできません。そうしたことから来る不安です。
3.キャリアがないことへの不安
途中でブランクがあるために、キャリアを積み重ねている同僚や後輩は高い役職へ就いている場合もあります。民間企業でもよくあることですが、年下の上司の下で上手に働けるかどうか不安だということです。
このような悩みが、看護師への復職や転職をためらわせる結果になっていますが、実は看護師資格を持つ人は非常にニーズが高く、社会から求められているのです。
看護業界における、潜在看護師の必要性について
看護師業界は実はかなりの「売り手市場」であります。離職率が高いのもそのせいですが、高齢化社会などによって病院以外にも看護師の知識を有する人は求められていて、ニーズは拡大しています。
看護師を取りまく現場は
①ベテランの技術の高い看護師が辞めていく
②資格を有する若い看護師が医療現場に就職しない
③老人ホームや介護施設など病院・クリニック以外の需要の増加
などの理由で、慢性的な看護師不足なっています。看護師資格を得る人が毎年5万人いるのに、実際に看護師として就職する人は2万人しかいないために、看護師が増えません。
働いている看護師、准看護師の数は140万人ほどいるようですが、それだけでは足りていないのが現実です。
新しく急に看護師を増やすこともできませんから、可能なのはすでに看護師資格を持っている人に職場に戻ってもらうことです。
このような看護師資格を持っているけれども現在、看護師として働いていない人のことを「潜在看護師」と呼び、その人たちは70万ほど存在するといわれています。
潜在看護師は現場が喉から手が出るほど欲しい人材ですので、上手にふるまうことができれば有利な条件での復職、転職が可能になります。
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ブランクがある人が看護師として転職、復職を成功させる方法
現場に看護師の需要があるとはいっても、ブランクがある人をいきなり最前線に配置してもそれはお互いにとって好ましいことではありません。即戦力として期待しつつも、実際にすぐに元の力を発揮するのは難しいのは事実です。そこで復帰を促すためのサポートする制度があります。
復職支援プログラムの受講
看護師として現場復帰するための助走、準備を行うために公的、私的問わずさまざまな機関が支援プログラムを設けています。
1.都道府県が行う講習
各都道府県のナースセンターやナースプラザでは、定期的に講習を行っています。公的機関なので、費用は基本的に無料ですが開催頻度などにばらつきがあるようです。
また、復職にあたっての相談コーナーなども設けられているため、迷っている場合などは相談してみるといいでしょう。
2.病院が開催する講習
大きな病院の中には、独自に復職支援のための研修を設けているところがあります。実際に臨床現場に触れながらのものなので、内容も最先端のものが多く、非常に勉強になります。
これは実際に潜在看護師の人が復職するにあたっては、なるべく自分の病院に就職してもらえるように(強制ではありませんが)、「青田買い」をする意味もあるといわれています。
3.転職支援サービスが行っているプログラム
意外ですが、看護師専門の転職支援サービスの中には、復職のための講習を行っているところがあります。これは1民間企業が勝手に行っているものではなく、病院などと連携して行っているため内容についても安心できます。
また、即求人とも連動しているため、いざ復職したい場合もその転職支援サービスを使って活動をすることが可能です。
復職、転職のための活動と復職支援講習を同時に進めることができるため非常に効率的です。病院と連携している場合には、その病院の「非公開」の求人もあり、有利な条件で復職することが可能です。
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復帰しやすい職場を選ぶ
潜在看護師は非常に「売り手」市場です。つまり、自分になるべく有利な条件を見つけて復帰することができます。
しっかりと復職講習を受けて、病棟や手術室など最前線での活躍をするのも1つの方法ですが、家庭生活との両立のために、そうではなく、パートや時短勤務で働くことも歓迎されます。
また、子育ての経験を活かせるように、保育園や児童福祉施設などで働くことも可能です。その場合は、その経験がプラス評価されることになるでしょう。
ほかの職種からの転職の場合も、まったくその経験が活かせないということはありません。人と接するサービス業を行っていた人ならば、そのコミュニケーション能力は高く評価されますし、男性で力仕事を行っていた人などは、体力が要求される部署(手術室、精神科など)では大いに歓迎されるでしょう。
ブランクを単なる「空白期間」だと考えずに、その間の経験をむしろ売りに出せるような職場を見つける「攻めの姿勢」も復職を成功させる秘訣です。
復職を成功させるために転職サイトを活用
ただし、復職をうまく成功させられる求人を見つけるのはなかなか簡単なことではありません。病院などの求人票を見ても「臨床経験3年以上」など条件が付いていることもありますし、その場合現職の看護師の人と同じ土俵で活動をすることになり、あまり有利ではありません。
そこでお勧めしたいのが看護師専門の転職サイト、転職支援サービスです。ここには、さまざまな看護師求人が寄せられていて、条件や待遇などが一目でわかるようになっています。
当然潜在看護師の人大歓迎という職場も多数登録されています。はじめから現職でないと採用しない職場は、排除することができますし、条件面もしっかりと記載されているため「看護師ならば誰でもいいけどブラック」のようなきつい職場も排除できます(条件に偽りがあれば、サイト側が拒否できます)。
潜在看護師でも大丈夫という職場は、ひょっとするとパートや時短勤務のものが多いかもしれませんが、そうではないものもあるかもしれません。そうした需要自体が普通に転職活動をしていてはわからないので、転職サイトに登録してどこまで求人があるのかを把握する必要があるというわけです。
また、さらに進んで転職エージェントなどのサービスに登録すれば、専門のコンサルタントから細かいアドバイスが受けられるとともに、ご自身の経験に合わせた職場の紹介を受けることもできます。他業種からの転職を希望される場合などは、その経験を活用できそうな転職先のあっせんも受けることができます。
いずれにせよご自身の価値を知る意味では、転職サイトの登録は是非ともしていただきたいと思います。
ブランクありの看護師にお勧めの職場
どの職場がいいのかは、ご自身の希望もありますので「これ」と断定することはできません。ただし、以下のような職場は、ブランクがある場合であっても歓迎されやすく、転職もしやすいようです。
病院外来
受け付けや診察室への案内などであれば、採血や注射などを行う機会も少なく、スムーズに現場に復帰しやすくなります。大病院のほうが分業体制が進んでいるため、よりお勧めです。時間も午前中だけで終わるなどやりくりが可能です。
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クリニック
病院よりも規模の小さいクリニックならば、重篤な患者さんや大けがをした人がやってくる可能性も低く、心理的なハードルも低いです。さまざまな雑務を行うこともありますが、勤務時間を大きく超えることも少なく、生活との両立が可能です。
ただ、採血などを行うこともありますので、事前講習は十分に受けておいてください。
介護施設
老人ホームやデイサービスのようなところです。病院ではないので医療行為を行うことは少なく、利用者の健康管理などが主な業務になるので、ブランクがあっても大丈夫なケースが多いです。
ただし、看護師としてだけではなく、介護士的な業務も行う可能性があります。介護士の離職率が高いのはよく知られています。どこまで、自分がこのようなことを行うのか十分に情報収集をお願いします。
保育圏
園児の子どもたちの健康管理や健康相談が主な業務になります。子育てでのブランクであれば、その経験を活かすこともでき歓迎されます。ただし、求人数が少なく、募集時期も限られているのが欠点です。
このような職場を効果的に探していくためにも、独力だと限界があります。やはり転職サイトなどを活用して求人情報を集めたほうが得策です。
まとめ
- また看護師として働きたいと悩んでいる人は結構多い
- 看護師の現場は人手不足で、看護師資格を持っていて現在看護師として働いていない「潜在看護師」のニーズが高い
- ブランクを埋めるために講習制度が充実している
- 潜在看護師として期待される職場を探すためには、転職サイトなどの活用が有利
- 無理なく復職できる職場は多数存在している

